-社会保険・ワンポイントゼミナール
◆【質 問】◆
当社の66歳の嘱託社員から、最近届いた通知書に老齢厚生年金額の減額について記載があったと聞きました。
給与額は1年以上前から同じで、その間に賞与も支給していないので、通常ならば年金額の改定はないはずなのですが、これは年金のしくみが何か変わったことによる改定なのでしようか?
◆【解 説】◆
★年金支給停止額の計算式の改定★
年金を受ける権利のある人が働きながら年金を受ける場合は、年金額と給与や賞与の額に応じて、年金額の1部または全額が支給停止になることがあります。これを一般的に「在職老齢年金制度」といいます。
この制度による支給停止額の計算方法は、受け取る人の年齢が65歳未満か65歳以上かで異なりますが、その計算に使用する「支給停止基準額」が、平成22年4月より「48万円」から「47万円」に改定されました。
質問の場合、支給停止額は、老齢厚生年金の額を12で除した「基本月額」と、その人の標準報酬月額に過去一年間に支払われた標準賞与額を12で除した額を加えた額である「総報酬月額相当額」に応じて決まります。
実際に4月以降の年金額にどう影響するか、65歳以上の人の場合で、簡単な例をあげてみましょう。
★65歳以上の在職老齢年金★
「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が「47万円」以下であれば支給停止は行われませんが、47万円を超える場合は超えた額の2分の1が支給停止となります。
したがって、「47万円」を超える場合には今回の変更により年金額に影響が出ることかあります。

★60歳以上65歳未満の在職老齢年金★
「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が「28万円」以下であれば支給停止は行われませんが、28万円を超える場合は「総報酬月額相当額」が「47万円」を超えるか超えないかで計算式が変わります。47万円を超える場合には今回の変更により年金額に影響が出ることがあります。
ただし、総報酬月額相当額が47万円を超えるような人の場合は、年金は従来より全額支給停止となっていることが多いので、今回の変更で影響を受ける人は少ないでしょう。
◆ワンポイント・チェック◆
今年4月からの「支給停止基準額」の改定により在職老齢年金の支給停止額に影響を受ける場合は、年金額は月換算で最大5,000円減少するとみられます。
年金すっきり回答
夫が死亡、もらえたはずの年金は?
《昭和26年生まれの女性Yさん(57歳)の質問》
今年10月に夫が61歳で死亡しました。60歳から老齢厚生年金を受けることができたのですが、退職後に自営業を始めたために忙しくて請求手続きをしていませんでした。 生前にもらえたはずの夫の老齢厚生年金は、死亡後でも遺族が請求できるのでしようか?
《回 答》
Yさんは、請求により死亡した夫が受け取れるはずだった老齢厚生年金を受け取ることができます。
支給対象となるのは、夫が60歳になった月の翌月から死亡した月までの15ヵ月分です。(7月16日が誕生日、1O月20日が死亡日)

《解 説》
【未支給の年金】
年金は、受ける権利が発生した月の翌月から権利が消滅した月までの間、月単位で支袷されることになっています。
年金を受けることができる人が死亡した場合、その人が受けることがてきた年金で、まだ支給されなかったものがあるときには、死亡当時、その人と生計を同じくしていた一定の遺族は、自己の名で請求することにより末支給の年金を受けることができます。
この未支給の年金を受けることができる遺族は次のとおりで、優先順位(①~⑥)が決められていて、先の順位の人が受けることがで
きるときは、後の順位の人は受けることができません。①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母、⑥兄弟姉妹
【死亡月の年金は「未支給」扱い】
年金の支払いは、「定期払」を原則としていて、支払い月は毎年2月、4月、6月、8月、10月および12月の偶数月の年6回で、それぞれ支払い月の前2カ月分が支払われることになっています。このため、例えば、年金を受けていた人が3月に死亡した揚合、死亡後は本人に支払うことができないため、本来は4月に支払われるはずの2月分と3月分は「未支給」の扱いになります、(図①)
また、年金を受けていた人が4月に死亡した場合には、本来は6月に支払われるはずの4月分が「未支給」の扱いになります。(図②)

このように、未支給の年金は、一般的には年金を受けていた人が死亡した場合に、死亡した月(死亡月によってはその前月も含む)の分の年金が対象となりますが、Yさんの夫のように、受給権のある人が、老齢年金の裁定請求をせずに死亡した場合にも対象となります。
ただし、受給権を得てから五年を経過しているときは、その超えた期間の分は時効により支給されません。(年金時効特例法によって、過去の年金記録の訂正が行われた結果、年金額が増加した場合などは、時効消滅分も支給されます)
★質 問★
《昭和38年生まれの女性 Uさん(45歳)の質問》
私の夫は11年前に43歳で他界し、現在私は遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けています。子どもが18歳になると遺族基礎年金はもらえなくなるそうですが、年金はその分減ってしまうのでしょうか? 子どもは一人で、その子が来年1月に18歳になります。
★回 答★
Uさんが受けている遺族基礎年金(平成20年度は、子の加算額を含めて1,020,000円)は、子が18歳になってから最初にむかえる年度末をもって支給が終了します。 しかし、Uさんは中高齢の寡婦加算の支給要件(本文中の②)を満たしていますので、遺族厚生年金に一定額(平成20年度は594,200円)が加算されるようになります。【Uさんの受給パターン(例)】

★解 説★
【中高齢の寡婦加算とは】
遺族基礎年金は、夫の死亡当時、原則として18歳未満の子がいる妻が受給権を有します。
そして、実際に遺族基礎年金を受けている妻の場合、対象となる子が18歳になった年度の末日(3月31日)が終了したときなど、受給権を得るための要件でいう「子」がいなくなった場合には、その時点で遺族基礎年金の支給は終了します。(失権)
しかし、年金制度では、子が成長したことで年金が急に減ってしまうことがないように配慮されていて、引き続き支給される遺族厚生年金に一定額の加算が行われることがあります。
また、夫の死亡当時に遺族基礎年金の対象となる子がいない場合にも、遺族厚生年金に一定額の加算が行われることがあります。これを「中高齢の寡婦加算」といいます。
【支給要件は】
中高齢の寡婦加算は、遺族厚生年金を受けることができる妻が次のいずれかに該当したときに支給されます。(ただし、老齢厚生年金を受けることができる人が死亡したことによる遺族厚生年金の場合は、死亡した夫の披保険者期間がニ○年以上なければ支給されません。)
①夫の死亡当時40歳(平成19年3月までは35歳)以上65歳未満であって、遺族基礎年金の対象となる子がいない妻の場合
→遺族厚生年金の支給開始と同時に支給されます。
②夫の死亡当時40歳(平成19年3月までは35歳)未満であって、40歳になったときに遺族基礎年金の対象となる子と生計を同じくしていた妻の場合
→子が18歳に到達した年度の末日(1、2級の障害を持つ子の場合は20歳に達した日)を経過したときから支給されます。
【支給はいつまでか】
この中高齢の寡婦加算は、妻が65歳になり妻自身の老齢基礎年金が受けられるようになると支給が打ち切られます。
しかし、昭和31年4月1日以前生まれの妻に対しては、それまで加算されていた中高齢の寡婦加算に代えて、生年月日に応じた一定の金額が「経過的寡婦加算」として支給されます。
再婚したら遺族年金はどうなる? 遺族給付の失権
○年金スッキリ回答○
★質 問★
《昭和40年生まれの女性Tさん(43歳)の質問》
私は現在、6年前に他界した夫の遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていますが、このたび再婚することになりました。再婚すると年金はもらえなくなるのでしょうか?
13歳の子どもが1人いて、再婚後も一緒に暮らします。
★答 え★
Tさんが両婚すると、遺族厚生年金、遺族基礎年金ともに受給権が消滅(失権)します。しかし、遺族厚生年金については、Tさんが失権したことにより、受けられる遺族の順位が同じである子に支給されるようになります。
また、遺族基礎年金については、再婚後も子と同居するため、子に対しては引き続き支給停止となります(受給権は消滅しません)。
★解 説★
【遺族厚生年金の失権】
遺族厚生年金や遺族基礎年金の受給権のある人が一定の事由に該当したときは、受給権が消滅します。これを「失権」といいます。
遺族厚生年金を受けている妻の場合、
①死亡したとき
②婚姻したとき(事実上の婚姻関係がある場合も含む)
③直系血族および直系姻族以外の人の養子となったとき
④離縁によって、死亡した人との親族関係がなくなったときに受給権が消滅します。
また、平成19年4月1目以降に、夫が死亡して遺族厚生年金を受けることになった場合には、夫が死亡した当時30歳未満であつて、遺族基礎年金の受給権を有していない妻(子のない妻)であるときは、遺族厚生年金の受給権を取得した日から起算して5年間を経過したときなども受給権が消滅します。
遺族厚生年金を死亡した人の子または孫が受けている場合は、前記①~④に加えて、次のいずれかに該当したときに受給権が消滅します。
⑤18歳到達年度の末日(3月31日)が終了したとき(1級または2級の障害の状態にあるときを除く)
⑥障害のある子または孫が18歳到達年度の末日が終了した後、1級または2級の障害の状態でなくなったとき
⑦1級または2級の障害の状態にある子または孫が20歳に達したとき

【遺族基礎年金の失権】
一方、遺族基礎年金については、遺族基礎年金を受けている妻の場合、本人の死亡や再婚に加えて、受給権を得るための要件でいう「子」がいなくなった場合などにも受給権が消滅します。
また、子への遺族基礎年金は、妻(その子にとっては母)が遺族基礎年金を受けているときや、生計を同じくする母または父がいるときは支給が停止されます(受給権は消滅しません)。そして、子自身が前記①~⑦に該当したときは、受給権が消滅します。
年金スッキリ回答
質問
《昭和24年生まれの女性Sさん(59歳)の質問》
私は現在、5年前に他界した夫の遺族厚生年金を受けています。来年、60歳になったら自分の老齢厚生年金を受ける権利が得られるそうですが、その場合、どちらかの年金を選択することになるのですか?
今は厚生年金には加入していませんが、以前は20年以上加入していました。
答え
65歳になるまでの間は、夫の遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金のいずれか選択です。
65歳以降は、夫の遺族厚生年金の額が自分の老齢厚生年金の額よりも多い場合には、その差額が遺族厚生年金として老齢厚生年金や老齢基礎年金とあわせて支給されます。
解説
現行の公的年金制度では、「老齢」、「障害」、「遺族」といった支給事由に基づいた年金がありまずが、「一人一年金」と言われるように、同一の支給事由による年金だけを受けられるのが原則となっています。
しかし、遺族厚生年金に関しては、例外的に、異なる支給事由の年金であっても両方を受けることができるしくみがあります。
【65歳未満では「選択」】
質問のように、夫の死亡により遺族厚生年金を受けている妻が60歳になって、かつて加入していた厚生年金に基づいて老齢厚生年金を受ける権利を有した場合は、65歳になるまでの間は原則どおり、いずれかの年金を選択することになります。
【65歳以降は「併給」も可能】
65歳以降では、遺族厚生年金と自分の老齢を支給事由とする年金をあわせて受けられるようになる場合があります。その主なパターンは次のとおりです。
①遺族厚生年金と老齢厚生年金
自分の老齢厚生年金が全額支給され、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となります。
つまり、遺族厚生年金が自分の老齢厚生年金より額が多い場合に、その差額が遺族厚生年金として支給されます。(下図上側)

ただし、昭和17年4月1日以前生まれの人で、平成19年3月31日以前に遺族厚生年金の受給権があった人にはこのしくみは適用されず、次のA・B・C
のいずれかを選択することになります。(Cは配偶者が受ける場合のみ)
A老齢基礎年金+老齢厚生年金
B老齢基礎年金+遺族厚生年金
C老齢基礎年金+老齢厚生年金X1/2 +遺族厚生年金X1/2
②遺族厚生年金と老齢基礎年金
自分の老齢厚生年金の受給権がない人は、遺族厚生年金の全額が老齢基礎年金とあわせて支給されます。(上図の下側)
年金すっきり回答
質問
《昭和27年生まれの女性 Nさん(56歳)の質問》
私と夫(58歳)は共稼ぎで、2人とも中断はありますが25年以上厚生年金に加入していて、現在も加入中です。今、もしも私と夫のどちらかが死亡した場合、残された方に遺族厚生年金は支給されるのでしようか?
子どもは2人いますが、もう成人しています。私の年収は約300万円、夫は約600万円です。
答え
2人とも老齢厚生年金の受給資格を満たし、生計維持関係があると認められるので、今の状況で、もしNさんの夫が死亡した場合、Nさんに遺族厚生年金が支給されます。
また逆に、もしNさんが死亡した場合、夫が遺族厚生年金を受ける権利を取得しますが、支給は60歳からとなります。(ただし、自分が老齢厚生年金を受けられるときは、65歳になるまでは遺族厚生年金との選択です。)
解説
【遺族厚生年金の支給要件】
遺族厚生年金は、死にLした人が次のいずれかに該当するときに、死亡当時、その人によって生計を維持されていた一定の範囲の遺族に支給されます。
①厚生年金の被保険者である間に死亡したとき
②厚生年金の被保険者であった人が、被保険者期間中に初診日(初めて医師等の診断を受けた日)がある傷病が原因で、初診日から五年以内に死亡したとき
③障害厚生年金(一級・二級)の受給権者が死亡したとき
④老齢厚生年金の受給権者または受けるための資格期間を満たしている人が死亡したとき
このうち、①、②の人については、死亡した日の前日において死亡日の属する月の前々月までの保険料を納めるべき期間のうち、保険料を納付した期間と免除された期間をあわせた期間が3分の2以上あることが必要です。(ただし、平成28年3月31日までの死亡の場合は、死亡した月の前々月までの一年間に保険料の未納がなければよいことになっています。)
また、「生計を維持されていた」とは、家計を1つにしていて、将来にわたっても厚生労働大臣の定める金額(年収850万円)以上の収入がないと認められることをいいます。
【遺族の範囲】
遺族厚生年金を受けることができる遺族は次のとおりで、複数の遺族がいる場合は、優先順位(①~④)の最も高い遺族に支給されます。
①配偶者(妻または夫)・子
*妻と子が遺族に該当する場合は妻に支給され、子は支給停止。夫と子が遺族に該当する場合は子に支給され、夫は支給停止。
*平成19年4月1日以降に受給権を取得した場合で、夫の死亡時に30歳未満で、18歳未満の子を養育しない妻に対して支給される遺族厚生年金は、5年間の有期給付。
②父母
③孫
④祖父母
このうち、子、孫については、死亡時に18歳に到達した以後の最初の3月31日を過ぎていないこと、または20歳未満の一定の障害者であって、現に婚姻をしていないことが必要です。
また、夫、父母、祖父母については、死亡時に55歳以上であることが必要で、原則として支給開始は60歳からとなります。
第一順位者に受給権があるときは、第二順位以下の人は遺族厚生年金を受けられる遺族とはなりません。また、先順位の人が受給権を失った場合でも、次順位の人は受給権を取得(転結)できません。
年金Q&A 年金すっきり回答
【質問】
国民年金加入者が死亡したら?(国民年金の遺族給付)
《昭和39年生まれの女性 Mさん(44歳)の質問》
私の夫(48歳)は現在自営業で、厚生年金には加入したことがなく、22歳頃から今までずっと国民年金保険料を支払っています。夫と結婚して21年。私の年収は160万円程度。子どもは1人で、20歳の大学生です。 この状況で、もし夫が死亡した場合、すぐに遺族年金はもらえるのでしょうか?
【答え】
Mさんの場合、今の状況で夫が死亡した場合、子ともが20歳になっているので遺族基礎年金は受けられません。 また、寡婦年金の受給権はありますが、Mさん自身が60歳になるまでは支給されません。すぐにもらえる可能性があるのは死亡一時金だけです。
【解説】
公的年金に加入していた人が亡くなった場合、どの制度に加入していたか、老齢給付を受ける資格を満たしていたか、あるいは受けていたか、遺族は誰なのか、などの状況によって受けられる遺族給付の種類と内容が決まります。
国民年金の遺族給付には、「遺族基礎年金」「寡婦年金」「死亡一時金」の3つがあります。
【遺族基礎年金】
遺族基礎年金は、次の①~③のいずれかにあたる人が死亡したときであって、死亡した人によって生計を維持されていた「子」のある妻、あるいは「子」に支給されます。(ここでいう「子」とは、18歳に到達した以後の最初の3月31日を過ぎていないこと、または20歳未満で一定の障害者であることなどの条件を満たしている子をいいます。)
①国民年金の被保険者(第2号被保険者も含みます)
②かつて国民年金の披保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所を有している人
③老齢基礎年金を受けている、または受けるための資格期間(原則25年以上)を満たしている人
このうち、①、②の人については「保険料納付要件」を満たしていることが必要です。これは、死亡した日の前日において死亡日の属する月の前々月までの保険料を納めるべき期間のうち、保険料を納付した期間と免除された期問をあわせた期間が3分の2以上あることをいいます。
ただし、平成28年3月31日までの死亡の場合に限っては、死亡した月の前々月までの1年間に保険料の未納がない場合も、保険料納付要件を満たします。
遺族基礎年金の額は保険料納付済期間などの長さにかかわらず定額で、子の数によって決まります。
【寡婦年金】
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者である夫が死亡した場合に、「子」がいない妻で、老齢基礎年金を受けられない妻に対して支給されます。婚姻期間が10年以上あることや、死亡した夫が老齢基礎年金を受ける資格期間を有していることなど、一定の要件をすべて満たしていることが必要です。
しかし、受ける権利があっても、妻が60歳から65歳になるまでの間しか受けられません。
寡婦年金の額は、死亡した夫が65歳に達したとき受給できたであろう老齢基礎年金の年金額の4分の3に相当する額となります。
【死亡一時金」
死亡一時金は、第1号被保険者として保険料を納付した期間と免除された期間をあわせた期開が3年以上ある人が死亡した場合であって、遺族基礎年金を受けられないときに、一定の遺族に対して支給されます。
なお、死亡一時金と寡婦年金を同時に受けることができるような場合は、いずれかを選択することになります。
年金すっきり回答
年金に加入していた外国人が帰国すると?(社会保障協定と脱退一時金)
【質問】
《1975年生まれの中国人男性Lさん(33歳)の場合》
私は7年前に来日して今の会社に就職しましたが、来月に会社を辞めて、母国の中国に帰る予定です。 その後は母国の会社に勤めることにしています。日本の会社では7年間厚生年金に加入していましたが、帰国すると年金はどうなるのでしようか?
【答え】
現在、日本と中国との問には社会保障協定が締結されていませんので、日本で厚生年金に加入した期間は通算されません。しかし、帰国後2年以内に請求すれば脱退一時金が受けられます。帰国する前に請求書を社会保険事務所などで入手してください。
*********** 解 説 ************
【社会保障協定とは】
海外で働く人などが、母国と相手国において社会保障制度のニ重加入なとの支障がないように、それぞれの制度の適用を調整したり、年金の受給資格を満たすための加入期間を通算できるようにするため、両国間で取り決めをすることがあります。これを「社会保障協定」といいます。
現在(平成20年4月時点)、日本が関係する社会保障協定は、ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、フランス、ベルギー、カナダの7カ国との間で発効しています。協定の内容は相手国によって多少の違いはありますが、年金制度については、原則として、現地採用や事業所から5年を超える見込みで相手国に派遣される場合は、就労する国の年金制度のみに加入し、5年以内の見込みで派遣される場合には、協定の例外規定が適用され、引き続き派遣元国の年金制度のみに加入し、派遣先国での加入が免除されます。また、相手国での年金加入期間を通算できるという内容が協定に盛り込まれていれば、相手国での加入期間を自国の年金制度に加入していた期間とみなして取り扱われます。つまり、両国間の年金制度への加入期間を通算して、年金を受給するために最低必要とされる期間以上であれば、それぞれの国の制度への加入期間に応じた年金がそれぞれの国の制度から受けられるようになります。
【脱退一時金とは】
日本の年金制度には、国民年金の保険料を納めた期間または厚生年金保険に加入した期間が6ヵ月以上ある外国籍の人については、帰国後2年以内に請求を行うことで、加入期間などに応じて計算された一時金が支給される「脱退一時金」制度があります。国民年金の脱退一時金は、保険料を納付した期間の月数に応じて定額で支給されます。また、厚生年金の脱退一時金は、加入期間の「平均標準報酬額」に、加入期間の月数や保険料率に応じた「支給率」を乗じた額で算出されます。ただし、すでに日本の公的年金を受ける権利を得ている場合や老齢年金を受け取る資格期間を満だしている場合などは、脱退一時金の請求はできません。また、脱退一時金を受けた場合、その期間は、社会保障協定において年金加入期間として通算できなくなります。したがって、社会保障協定によって年金加入期間の通算が可能となっている相手国の人が日本の年金制度に加入したときは、将来通算により年金として受給するか、脱退一時金を受けるかを、十分見極めることが必要となるでしょう。
《昭和30年6月生まれの女性Jさん(52歳)の場合》
私は現在、専業主婦ですが、結婚前に約6年、結婚後は約4年の延べ10年近く厚生年金に加入したことがあり、56歳の夫は今までずっと厚生年金に加入しています。今年4月から離婚する場合の厚生年金の分割のしくみが新しく追加されたそうですが、今までとはどう違うのですか。また、今後私が利用するとすれば、どちらの方法になるのでしょうか。
夫婦が離婚した際などに、請求によって年金を分割することができる制度は、まず離婚時の分割制度が平成19年4月から、離婚時の第3号被保険者期間についての分割制度が平成20年4月から、それぞれ導入されました。
対象となる年金は、いわゆる「2階部分」の厚生年金や共済年金で、現役時代の報酬に比例した部分の年金です。「1階部分」の基礎年金(国民年金)や「3階部分」の企業年金などは分割の対象とはなっていません。
厚生年金の2つの分割制度については次のとおりです。
(1)離婚時の厚生年金の部分
平成19年4月1日以降に夫婦が離婚した場合(*)で、当事者間の合意や裁判手続により按分(あんぶん)割合を定めたときには、双方または一方からの請求によって、婚姻期間中などの保険料納付記録を当事者間で分割することができます。
分割の対象となる婚姻期間などには、平成19年4月1日前の期間も含まれます。「保険料納付記録」とは、厚生年金保険料の算定の基礎となった標準報酬(標準報酬月額と標準賞与額)の記録をいいます。
つまり、対象となる期間の標準報酬の記録を離婚時の価値に換算した額の合計額を分割することによって、厚生年金の受け取り額に反映させるというものです。按分割合は話し合いなどで決めますが、2人の保険料納付記録の合計の2分の1を限度とします。
(*)事実上の婚姻関係の解消も含みますが、その場合、分割の対象になるのは、当事者の一方が国民年金法上の第3号被保険者(会社員や公務員などの第2号被保険者の被扶養配偶者)であった期間に限られます。
(2)第3号被保険者期間についての厚生年金の分割
この制度は、平成20年4月1日以降の離婚などの場合に、同日以降の第3号被保険者期間について、相手方となる第2号被保険者にかかる厚生年金の保険料納付記録を、その第3号被保険者期間を有していた人からの請求により分割できるというものです。
前記(1)のしくみと異なる主な点は、分割の対象となる期間が平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間に限られていること、按分割合を話し合いなどで決める必要はなく、一律に「2分の1」であること、などです。
なお、社会保険庁では、当事者の双方または一方から請求があれば、厚生年金の分割の請求を行うために必要な保険料納付記録などの情報を提供しています。
答え:Jさんが今後もし離婚した場合は、どちらの分割方法についても請求できます。
具体的には、(1)の分割の場合、婚姻期間中のお互いの厚生年金の保険料納付記録について、話し合い(まとまらない場合は裁判手続き)で按分割合を決めれば分割できます。
また、(2)の分割の場合は、平成20年4月1日以降のJさんが第3号被保険者であった期間について、その間の夫の厚生年金の保険料納付記録の2分の1をJさんに分割できます。
《昭和23年9月生まれの女性Fさん(59歳)の場合》
私は現在会社勤めをし、厚生年金に加入しています。
先日、社会保険事務所で自分の年金記録を調べてもらったところ、18年ほど前、夫と離婚した直後から現在の会社に就職するまでの間に、国民年金保険料の全額を免除されていた期間が75ヶ月間ありました。
また、60歳まで勤めると、免除期間のほかに保険料を支払ったとみなされる期間は「320ヶ月」となるそうです。
免除されていた期間は、年金をもらうための資格にはなるけれど、年金額は3分の1になると聞きました。この期間については、老齢基礎年金の額はいくら位減ることになりますか?
【保険料免除制度の種類】
自営業者や20歳以上の学生などの国民年金第1号被保険者は、定額の国民年金保険料を支払うことが必要です。
しかし、家計が苦しいなどの理由で保険料を支払えない状況にある人のために、保険料が免除される制度があります。
免除は大きく分けて、生活保護法による生活扶助を受けている人や公的な障害年金給付(原則として1,2級)を受けている人などのための「法定免除」、所得が基準額以下である人などが申請すれば認められる「申請免除」があります。
このうち、申請免除には、「全額免除」のほかに一部だけが免除される制度もあり、「半額免除」に加えて、平成18年7月から導入された「4分の1免除」と「4分の3免除」の全部で4種類があります。
【免除期間はどうなるのか】
免除された期間は、老齢基礎年金を受けるために必要とされる期間(受給資格期間)に算入されます。
ただし、老齢基礎年金の額を計算するときは、免除期間は、それぞれの免除の種類に応じて、免除期間中の「月数」が下枠のように換算されます。
たとえば、30ヶ月分が全額免除されると、その分の年金額は30×1/3=10か月分で計算されます。
全額免除期間 ⇒ 免除月数 × 1/3
4分の3免除期間 ⇒ 免除月数 × 1/2
半額免除期間 ⇒ 免除月数 × 2/3
4分の1免除期間 ⇒ 免除月数 × 5/6
【保険料の「追納」ができる】
このように、保険料の免除を受けると、納めた場合に比べて年金が減ってしまういことになりますが、これを避けたい場合には、免除を受けてから10年以内であれば免除期間の保険料を後から納めることができます。これを「追納」といいます。
〔Fさんの場合〕
答え:老齢基礎年金について試算してみますと、全額免除された期間の「75ヶ月分」は、年金額計算では、その3分の1の「25ヶ月分」に換算されます。したがって、保険料納付済み期間の「320ヶ月」と合算して「345ヶ月」が算入されます。
老齢基礎年金は、原則として480ヶ月(40年)の保険料納付済み期間で満額の792,100円(平成20年度)となります。
Fさんが60歳で退職した場合の老齢基礎年金の額は、繰り上げ受給をしないで免除期間も保険料を納めたと仮定すれば、792,100円×395/480=651,832→651,800円となりますが、実際は免除期間があるため、
792,100円×345/480=569,321→569,300円で、その差額は82,500円となります。
*この結果はあくまでも試算です。
《昭和18年6月生まれの男性 Hさん(64歳)の場合》
私は会社の常勤役員でもうすぐ65歳になりますが、社長から65歳以降も続けるよう要請されています。
今は役員報酬が高いので特別支給の老齢厚生年金は60歳から全額ストップされていますが、次の決算期(8月)が来たら報酬を下げて、年金を全額もらえるようにしたいと思っています。報酬をいくら位まで下げれば良いでしょうか?
【60歳代後半の在職老齢年金】
在職中で厚生年金に加入している60歳代後半(65〜69歳)の人は、老齢基礎年金は全額支給されますが、老齢厚生年金は「総報酬月額相当額」と老齢厚生年金(加給年金を除く)の月額(基本月額)との合計額に応じて、年金の全部または一部が支給停止となることがあります。
*「総報酬月額相当額」とは、その月に適用される「標準報酬月額」(保険料や給付の計算基礎となるもの)と、その月以前1年間の「標準賞与額」(賞与の千円未満を切り捨てた額、上限は1回につき150万円)の総額を12で割った額の合計をいいます。
60歳代後半の人の在職老齢年金は、下の枠のようなしくみになっています。
なお、平成19年4月1日から、70歳以上の人についても、60歳代後半と同様な在職老齢年金のしくみが適用されるようになりました(保険料の負担はありません)。ただし、昭和12年4月1日以前生まれの人には適用されません。
老齢厚生年金(加給年金を除く)の月額(基本月額)と総報酬月額相当額との合計が
(1)48万円以下のとき・・・支給停止なし(全額支給)
(2)48万円を超えるとき・・・(基本月額+総報酬月額相当額−48万円)×1/2が支給停止(月額)
【全額を受けられるようにするには…】
Hさんの話によると、社会保険庁より回答された65歳からの年金見込額は次のようになっています。
老齢基礎年金
741,600円(月額61,800円)
老齢厚生年金(加給年金を除く)
1,632,000円(月額136,000円)
加給年金
396,000円(月額33,000円)
例えば、Hさんの総報酬月額相当額が現在と同じ62万円の場合、
年金停止額(月額)=(13万6,000円+62万円−48万円)×1/2=13万8,000円
となり、支給停止額が老齢厚生年金の額を上回るため、老齢厚生年金は全額が支給停止となります。またこの場合、加給年金も全額支給停止となるので、Hさんが65歳から受けられるのは、老齢基礎年金の月額61,800円のみとなります。
Hさんが希望しているように、年金の全額を受けるためには、上記(1)のように、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額との合計が48万円以下でなければなりません。
老齢厚生年金の繰り下げ
年金の2階部分にあたる老齢厚生年金の繰り下げ支給は、年金制度の改正で一時期廃止されていましたが、その後の改正で平成19年4月1日から復活しました。
これにより昭和17年4月2日以降生まれの人は、老齢基礎年金だけではなく、老齢厚生年金も66歳以降本人が希望する時期から繰り下げて受けることができます。
繰り下げ支給は、65歳より前に特別支給の老齢厚生年金を受けている人(Fさんのように全額支給停止の人も含む)も対象となります。
増額の率は老齢基礎年金の繰り下げ(昭和16年4月2日以降に生まれた人)と同じですが、増額の対象となる年金額は、原則として、本来の老齢厚生年金の受け取り開始となる65歳時点で計算された老齢厚生年金の額を基準とします。
〔Hさんの場合〕
答え:総報酬月額相当額が、48万円と老齢厚生年金の基本月額との差額である344,000円以下になれば、年金は全額支給されます。
(計算式:480,000円−136,000円=344,000円)
*この結果はあくまでも試算です。
《昭和23年3月生まれの男性 Gさん(59歳)の場合》
60歳再雇用で会社勤めを続けた場合、年金はいくら減額されるのでしょうか?
■60歳からの給与額(標準報酬月額)‥24万円
■60歳に達した月の総報酬月額相当額‥33万円
■特別支給の老齢厚生年金の額‥120万円(基本月額は10万円)
■60歳到達時の賃金月額‥45万円
前号で、Gさんの在職老齢年金の支給停止額を以下の計算式で算出しました。
支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額−28万円)×1/2=(10万円+33万円−28万円)×1/2=7.5万円
ここからさらに、Gさんは雇用保険の高年齢雇用継続給付を受けられるということですので、それによる年金額の調整も行われます。
【高年齢雇用継続給付との調整】
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の一般被保険者であって、被保険者であった期間が通算して5年以上ある人について、60歳以降の賃金が60歳到達時の賃金に比べて一定の割合を下回った場合に支給対象となります。平成15年5月1日以降に60歳に達した人については、この低下率が75%未満となった場合に対象となり、支給額は、支給対象月の賃金に一定の支給率を乗じて算出されます。
支給率は賃金が61%未満まで低下した場合が最大で15%、賃金の低下率が61%以上75%未満の間ならば、その低下率によって支給率も逓減されます。ただし、賃金と高年齢雇用継続給付の合計には一定の限度額があります。
この場合の在職老齢年金については、賃金の低下率が61%未満の場合が年金支給停止率も最大で、標準報酬月額の6%が支給停止されます。賃金の低下率が61%以上75%未満の場合は、高年齢雇用継続給付の給付率の減少にあわせて年金支給停止率も6%から逓減されます。(下表参照)
在職老齢年金と高年齢雇用継続給付との調整(原則的な計算式)
| 賃金の低下率(60歳以降の賃金/60歳到達時の賃金) |
高年齢雇用継続給付の支給額 |
在職老齢年金の支給停止額 |
| 61%未満 |
支給対象月の賃金×15% |
標準報酬月額×6% |
| 61%以上75%未満 |
支給対象月の賃金×(15%から逓減した率 |
標準報酬月額×(6%から逓減した率) |
さて、Gさんの場合は、60歳到達時の賃金月額が45万円、60歳からの給与額が月24万円ですので、その低下率は24万円÷45万円×100≒53.3%となり、61%未満です。
したがって、標準報酬月額24万円の6%にあたる14,400円が調整により支給停止されます。
以上、Gさんのケースについて、在職老齢年金の額を試算しますと次のようになります。
Gさんの在職老齢年金(60歳到達直後で試算)
基本月額(①) … 100,000円
基本月額と総報酬月額相当額による支給停止(②) … 75,000円(月額)
高年齢雇用継続給付との調整による支給停止(③) … 14,400円(月額)
在職老齢年金支給額(①−②−③) …
10,600円(月額)
※この結果はあくまでも試算です。60歳以降給与額や賞与額が変動すると、標準報酬月額や総報酬月額相当額、賃金の低下率なども変動しますので、在職老齢年金の支給停止額も変わることがあります。
《昭和23年3月生まれの男性Gさん(59歳)の場合》
私はまもなく60歳になりますが、現在勤めている会社には60歳以降も再雇用という形で残ることになっています。
社会保険事務所で年金の見込額を算出してもらったところ、60歳から特別支給の老齢厚生年金を受けられる権利があるのですが、会社勤めをし厚生年金に加入している間は給与によっては一定額が減額されたり、全額支給停止になる場合もあると聞きました。
仮に、60歳からの給与が月24万円(諸手当込み)の場合、年金はいくら減額されるのでしょうか?
「在職老齢年金」とは
60歳以上の人が、厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受けようとする場合、実際に支給される年金額は、給与などに応じて一部または全額の支給が停止されるしくみになっています。在職中に減額のうえ支給される年金のことを「在職老齢年金」といいます。
在職老齢年金のしくみは大変複雑で、とくに60歳代前半(60歳〜64歳)の人は、特別支給の老齢厚生年金の額や60歳からの給与と賞与の額(総報酬月額相当額)による減額に加えて、雇用保険から高年齢雇用継続給付を受給する場合は調整を受けますので、年金支給額が頻繁に変わることがあります。
基本月額と総報酬月額相当額による計算
在職老齢年金の支給停止額の計算は月ごとに行われ、60歳代前半の人の場合は、本来の年金額(加給年金を除く)を12で割った額(基本月額)と総報酬月額相当額による支給停止額が計算されます。
「総報酬月額相当額」とは、その月に適用される「標準報酬月額」(保険料や給付の計算基礎となるもの)と、その月以前1年間の「標準賞与額」(賞与の1,000円未満を切り捨てた額、上限は1回につき150万円)の総額を12で割った額の合計をいいます。
Gさんの話によると、60歳に達した月の総報酬月額相当額は次のようになります。
〔標準報酬月額〕24万円+〔前1年間の標準賞与額の1ヵ月あたりの金額〕(108万円÷12)=33万円
また、社会保険事務所で情報提供されたGさんの年金見込額によると、60歳から63歳までは報酬比例部分のみ特別支給の老齢厚生年金が支給され、その額は約120万円ですので、基本月額はこれを12で割った10万円です。ここから、支給停止額を計算します。
支給停止額は基本月額と総報酬月額相当額に応じて、右表の計算式にあてはめます。Gさんの場合は㈰の計算式にあてはめます。
支給停止額=(10万円+33万円−28万円)×1/2=7.5万円
さらに、Gさんは高年齢雇用継続給付を受けられるということなので、それによる年金額の調整も行われます。
(次号へ続く)
60歳〜64歳の在職老齢年金の支給停止額計算式
| 基本月額と草報酬月額相当額の合計 |
基本月額 |
総報酬月額相当額 |
支給停止額の計算式(月額) |
| 28万円以下 |
- |
- |
支給停止なし(全額支給) |
| 28万円超 |
28万円以下 |
48万円以下 |
(1)(基本月額+総報酬月額相当額-28万円)
×1/2 |
| 28万円以下 |
48万円超 |
(2)(48万円+基本月額-28万円)×1/2
+(総報酬月額相当額-48万円) |
| 28万円超 |
48万円以下 |
(3)総報酬月額相当額×1/2 |
| 28万円超 |
48万円超 |
(4)(48万円×1/2)+(総報酬月額相当額-48万円) |
《昭和18年5月生まれの男性Fさん(64歳)の場合》
私は現在会社の取締役で、厚生年金にも加入していますが、収入が多いので年金(特別支給の老齢厚生年金)は全額支給停止となっています。会社の規定で取締役の退任は68歳となっていますので、その時点で会社も退職し厚生年金は68歳から受ける予定です。
私の場合、60歳の時に年金を受ける手続きを行っていますが、68歳になってから申し出れば厚生年金は増額になるのでしょうか?
「繰り下げ支給」とは
日本の年金制度では、年金は65歳から受けるのが原則となっています(60歳代前半に受けられるのは、「特別支給」の老齢厚生年金)。ただし、本人が希望すれば、66歳から70歳になるまでの希望する時期から年金を受けることもできます。これを「繰り下げ支給」といいます。
この場合、受給開始時期を遅らせるほど増額の割合が高くなります。
厚生年金加入者の65歳以降の老齢年金は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建て給付になりますが、どちらの年金にも繰り下げ支給の制度があります。
老齢基礎年金の繰り下げ
老齢基礎年金は、繰り上げ支給の請求をしていなければ原則として65歳から支給されますが、66歳以降に繰り下げ支給の申し出をすると、65歳になった月から繰り下げの申し出を行った月の前月までの月数に応じて、年金額は1ヶ月増すごとに本来の額に0.7%ずつ加算されます。
たとえば、最も遅い70歳で申し出をすると、5年×12ヶ月×0.7=42%の増額となります。
これは、昭和16年4月2日以降に生まれた人に適用される率で、それより前に生まれた人は申し出た時の年齢で率が決まり、66歳の12%増額から70歳の88%増額まで5段階で決められています。
老齢厚生年金の繰り下げ
年金の2階部分にあたる老齢厚生年金の繰り下げ支給は、年金制度の改正で一時期廃止されていましたが、その後の改正で平成19年4月1日から復活しました。
これにより昭和17年4月2日以降生まれの人は、老齢基礎年金だけではなく、老齢厚生年金も66歳以降本人が希望する時期から繰り下げて受けることができます。
繰り下げ支給は、65歳より前に特別支給の老齢厚生年金を受けている人(Fさんのように全額支給停止の人も含む)も対象となります。
増額の率は老齢基礎年金の繰り下げ(昭和16年4月2日以降に生まれた人)と同じですが、増額の対象となる年金額は、原則として、本来の老齢厚生年金の受け取り開始となる65歳時点で計算された老齢厚生年金の額を基準とします。

〔Fさんの場合〕
答え:68歳で会社を退職し老齢厚生年金の繰り下げを申し出ると、本来の額を25.2%増額した老齢厚生年金を受けることができます。
(計算式)
3年×12ヶ月×0.7=25.2%
《昭和22年1月生まれの男性Eさん(60歳)の場合》
私は現在、在職老齢年金として年金の一部(報酬比例部分の老齢厚生年金)を受けていますが、病気がちなので、61歳を機に退職して当面は年金を頼りにと考えています。
残りの(定額部分の)年金は63歳まで受けられませんが、申し出れば早くもらえると聞いています。その場合、どのくらいの割合で減額されるのでしょうか?
本来は65歳から受けられる老齢起訴年金は、請求すれば支給開始時期を65歳より前に早めることができます。これを「繰り上げ支給」と言います。
繰り上げ支給の場合、繰り上げ時期に応じて一定の額が減額され、65歳を過ぎても変わることはありません。
繰り上げには、「全部繰り上げ」と「一部繰り上げ」の2つの方法があります。
「全部繰り上げ」をすると、昭和16年4月2日以降に生まれた人の場合は、100%から繰り上げた歴月数に「1.5」を乗じた率を減じたものが「支給率」となります。
Eさんのケースでは(100-48月*0.5)=76%となります。ただし、全部繰り上げをすると定額部分の年金が支給停止となります。(下図(1)を参照)
一方、「一部繰り上げ」とは、定額部分の受給総額を繰り上げ開始時期から65歳になるまでの間にならしたもの(繰り上げ調整額)と、それに連動して減額された老齢基礎年金の一部を同時に繰り上げて受ける方法です。
したがって、定額部分の支給開始年齢が段階的に61歳から64歳の間にある昭和16年4月2日(女性は21年4月2日)から昭和24年4月1日(女性は29年4月1日)までの間に生まれた人だけが選択できるケースです。
Eさんのケースでは、63歳から65歳の2年間に受ける定額部分の年金を61歳に繰り上げて4年間受けようとすると、その額は2年を4年で割った率、つまり50%に減額されます。
そして、老齢基礎年金も本来の額の50%が65歳から支給され、残りの50%に「支給率」(76%)を乗じた額(38%)を61歳まで繰り上げてうけることになります。(下図(2)を参照)
〔Eさんの場合〕
答え:本来65歳から受け取る老齢基礎年金は、全部繰り上げの場合は本来額の76%に、一部繰り上げの場合は定額部分の繰り上げ調整額を含めて88%に減額されます。
全部繰り上げと一部繰り上げ
Eさんのケース(61歳に繰り上げ)



《昭和23年3月生まれの男性Dさん(59歳)の場合》
私は勤続32年の会社員で、来年3月に60歳になります。年金が全額もらえるようになる64歳までは、会社の継続雇用制度を利用しようと思っています。
扶養している妻がいれば年金額が加算されると聞きましたが、私の場合いくら加算されますか。
また、加算された年金はいつまでもらえますか。妻は昭和27年8月生まれ(現在55歳)で、厚生年金に加入したことはありません。
【「加給年金」とは】
老齢厚生年金を受ける権利がある人で、厚生年金に加入した期間が原則として20年以上あり、その人に生計を維持されている65歳未満の配偶者や18歳未満の子がいれば、通常の年金に一定額が加算されます。これを「加給年金」といいます。
年金受給者に18歳未満の子がいるケースはたいへん稀であり、ほとんどの場合は配偶者に対する加給年金です。
配偶者に対する加給年金の額は、年額22万7,900円(平成19年度価額)で、それに昭和9年4月2日以降に生まれた年金受給者には、生年月日に応じて加算される「特別加算」がつきます。
【「生計が維持されている」基準】
加給年金が受けられるかどうかの一つの基準に、対象となる配偶者との生計維持関係があります。
具体的には、受給権を取得したときに配偶者の年収が850万円未満である場合に、「生計が維持されている」と認められますが、年収が850万円以上であっても、おおむね5年以内に850万円未満になるとみられる場合や、所得金額に換算した額が655万5,000円未満になる場合は支給対象になります。
【加給年金を受けられる期間】
60歳から特別支給の老齢厚生年金を受けられる人の場合、加給年金がつくのは、「定額部分」の年金支給開始年齢になったときからです。「報酬比例部分」の年金のみを受けている間は加給年金はつきません。
また、対象となる配偶者自身が65歳に達して老齢基礎年金を受けられるようになったときは、加給年金の支給は打ち切られます。
しかし、その代わりに、配偶者(昭和41年4月1日以前の生まれに限る)の老齢基礎年金に生年月日に応じて定められた額が加算されます。これを「振替加算」といいます。
また、配偶者自身も厚生年金に加入した期間が20年以上(中高年齢の特例適用者は期間が短縮)あって老齢厚生年金を受けられる間や、配偶者が障害年金を受けている間などは加給年金は支給停止されます。
〔Dさんの場合〕
答え:年額396,000円の加給年金を、Dさんが64歳に達したときから妻が65歳になるまで受けられます。

《昭和24年11月生まれの女性 Cさん(57歳)の場合》
夫は来月60歳の定年を機に会社を辞め、仲間と店を開く準備を始める予定で、会社を辞めた後は国民年金には加入しなくてもよくなると言っています。
私は現在専業主婦ですが、まだ60歳前なので、このままだと国民年金に加入しなければなりませんか?
またその場合、何か手続きが必要ですか?
【国民年金の加入のしかた】
国民年金は「基礎年金」とも言うように、2階建て構成の日本の年金制度の土台となっています。
原則として20歳以上60歳未満の人は国民年金に強制加入となりますが、その加入のしかたは少し複雑になっています。
国民年金の加入者の区分には、20歳以上の学生や自営業者などの「第1号被保険者」、厚生年金保険や共済組合に加入する会社員や公務員などの「第2号被保険者」があり、さらに、その第2号被保険者によって扶養される20歳以上60歳未満の配偶者(被扶養配偶者)である「第3号被保険者」があります。
第3号被保険者である間は、個別に国民年金保険料を納める必要はありませんが、年金額を計算する際には保険料を納めた期間(保険料納付済期間)として扱われます。
【第3号被保険者への種別変更】
第1号被保険者や第2号被保険者である人が、健康保険などの被扶養者になることで第3号被保険者に該当することになった場合には、「種別変更」の届け出が必要となります。
たとえば、厚生年金に加入する会社員と結婚し被扶養配偶者となる場合や、すでに結婚している会社員が退職し被扶養配偶者となる場合などがよくあるケースです。この届け出は、配偶者である第2号被保険者が勤めている会社などを経由して行うことになっています。
【第1号被保険者への種別変更】
第2号被保険者や第3号被保険者が、第1号被保険者になる場合も「種別変更」の届け出が必要となります。
たとえば、夫が会社員で妻が専業主婦の場合でみると、夫が60歳未満で会社を退職した場合は、第2号から第1号への種別変更となりますが、扶養されていた妻も60歳未満であれば第3号から第1号への種別変更が必要となります。
この届け出は、本人が住所地の市区町村で行うことになっています。
また、第1号被保険者への種別変更後は国民年金保険料の支払いが必要になりますが、収入が極端に少ないなどの理由で保険料を払うのが困難な場合は、保険料免除制度を利用することもできます。
国民年金の種別変更の例(女性の場合)

〔Cさんの場合〕
「答え」
国民年金の第1号被保険者への種別変更手続きが必要です。
Cさんは現在は第3号被保険者ですが、夫が退職した場合は、Cさん自身は専業主婦であっても60歳未満なので、国民年金の第1号被保険者となります。
《昭和22年9月生まれの女性 Bさん(59歳)の場合》
現在64歳の夫は無職で年金を受けています。自分は週3日のパート勤務で国民年金保険料を払っていますが、60歳まで保険料を払っても満額の老齢基礎年金をもらうにはまだ4年ほど足りないそうです。
このままパート勤務を続けながら満額をもらうにはどうすればいいですか?
【満額支給の条件】
現在、国内に住む20歳以上60歳未満の人は、国民年金に強制的に加入となります。原則として、この40年間のすべてが「保険料納付済期間」であれば、満額の老齢基礎年金を受けることができます。
保険料納付済期間とは、次の3つの期間を合算した期間をいいます。
- 国民年金保険料を納めた期間(第1号被保険者)
- 厚生年金(共済年金等を含む)の被保険者であった期間のうち、昭和36年4月以降に20歳以上60歳未満であった期間(第2号被保険者)
- 昭和61年4月以降に第2号被保険者の被扶養配偶者であった期間のうち、20歳以上60歳未満であった期間(第3号被保険者)
また、所得が少ない人が申請により保険料の全部または一部を免除された期間(学生納付特例を除く)も年金額に反映されますが、保険料納付済期間とは別の扱いとなります。
たとえば、全額を免除された期間は、その間の保険料を「3分の1」だけ納付したものとみなされて年金額が計算されます。
ただし、免除月から10年以内に保険料を追納すれば、追納した月は保険料を通常どおり納めたものとして扱われます。(学生納付特例も10年以内に追納すれば同様な扱い)
なお、昭和16年4月1日以前に生まれた人は、経過措置として、満額の老齢基礎年金をもらうために必要な加入期間(加入可能年数)が、生年月日により25年~39年に短縮されています。
老齢基礎年金の計算式(昭和16年4月2日以降に生まれた人)

※保険料免除割合に応じて換算した月数 = A + B + C + D
A:全額免除月数 * 1/3 C:半額免除月数 * 2/3
B:4分の3免除月数 * 1/2 D:4分の1免除月数 * 5/6
【国民年金の高齢任意加入】
国民年金には、「高齢任意加入制度」があります。これは、受給資格期間(原則25年間)を満たしていない人や満額の老齢基礎年金を受給できない人で60歳以上65歳未満の人が、任意加入できる制度です。任意加入し保険料を納付することで、受給資格期間を満たしたり満額の老齢基礎年金に近づけたりすることができるようになります。
また、特例の任意加入として、昭和40年4月1日以前に生まれた65歳以上70歳未満の人で受給資格期間を満たしていない人は、受給資格期間を満たすため国民年金に任意加入することができます。
〔Bさんの場合〕
60歳に達した時点で、満額の老齢基礎年金を受け取るために必要な保険料納付済期間を満たしていません。
「答え」:60歳以降も国民年金に任意加入し、保険料納付済期間が「40年」になれば満額もらえます。住所がある市区町村の国民年金担当窓口に届け出を出してください。
昭和24年1月生まれの男性Aさん(58歳)の場合、現在勤めている会社で厚生年金に18年間加入しています。それ以前は自営業で国民年金に加入せず、保険料も一切納付していません。
このまま60歳の定年まで勤めてから会社を辞めても、60歳から老齢厚生年金をもらえるでしょうか?
昭和61年の年金改正で、将来的に老齢厚生年金は65歳から支給されることが原則となりましたが、現在はその経過措置として、60歳以上65歳未満の間は生年月日によって「特別支給の老齢厚生年金」が受けられます。
これを、60歳から受ける権利を得るためには、次の3つの要件すべてに該当していることが必要です。
(1)老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていること
(2)厚生年金の加入期間が1年以上あること
(3)60歳以上であること
このうち、(1)の要件は、老齢基礎年金(国民年金)を受給するのに必要な加入期間があるということで、その期間は原則「25年(300ヶ月)」です。
この加入期間には、国民年金の「保険料を納付した期間」と「保険料を免除された期間」および「合算対象期間」(年金額には反映されないが、加入期間としてカウントできる期間)がすべて合算されます。これが「受給資格期間」と呼ばれているものです。
また、厚生年金の加入期間は、国民年金の保険料を納付した期間とみなされるため、厚生年金と国民年金の加入期間を合計した期間が25年あれば、受給資格期間を満たすことになります。
しかし、年金制度が変わっていく過程で、改正の時に一定以上の年齢であった人は、25年の期間を満たせないケースが生ずることから、25年より短い期間であっても㈰の要件を満たせるように次の経過措置が設けられています。
A 昭和31年4月1日以前に生まれた人で、厚生年金(共済年金等も含む)の加入期間が生年月日に応じて設定された期間以上ある(A表参照)
B 昭和26年月1日以前に生まれた人で、男性は40歳以降、女性は35歳以降の厚生年金の加入期間が生年月日に応じて設定された期間以上ある(B表参照)
| A表 |
| 生年月日 |
加入期間 |
| 昭和27年4月1日以前 |
20年 |
| 昭和27年4月2日〜昭和28年4月1日 |
21年 |
| 昭和28年4月2日〜昭和29年4月1日 |
22年 |
| 昭和29年4月2日〜昭和30年4月1日 |
23年 |
| 昭和30年4月2日〜昭和31年4月1日 |
24年 |
| B表 |
| 生年月日 |
加入期間 |
| 昭和22年4月1日以前 |
15年 |
| 昭和22年4月2日〜昭和23年4月1日 |
16年 |
| 昭和23年4月2日〜昭和24年4月1日 |
17年 |
| 昭和24年4月2日〜昭和25年4月1日 |
18年 |
| 昭和25年4月2日〜昭和26年4月1日 |
19年 |
〔Aさんの場合〕
昭和24年1月生まれの男性で、40歳以降に厚生年金に17年以上加入しているので、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしています。
「答え」
もらえます。
特別支給の老齢厚生年金のうち、「報酬比例部分」が60歳から受けられます。