労務ニュース

割増賃金の返上はできるか?

      -ここが知りたい労使問題

◆【質 問】

当社は広告看板等設置補修の請負会社ですが、長引く不況により受注は激減しております。日中は仕事がなくても受注に対応できるよう何名か必ず待機が必要で、終業時刻後も「明日までに完成してほしい」といった緊急の受注にも対応しなければなりません。
 そのような状況の中で、経営状態も大変厳しいことから、雇用を維持するべきか、ほかに対策はないかなど従業員と話し合いを続けたところ、全員の雇用を維持するのであれば、不況時の一定期間は緊急の時間外労働が発生した場合でも、時間外割増賃金は返上してもよいという提案がありました。
 このような従業員からの申し出があっても、時間外割増賃金は支払うべきでしょうか?

◆【回 答】

労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)は強行規定なので、たとえ従業員全員が会社の実情を理解し納得した上で割増賃金を返上するとの申し出をした場合であっても、これを支払わなければなりません。

 労働基準法第37条に定める時間外労働などの割増賃金を従業員側から返上したいとの申し出があった場合の取扱いについては、通達で次のように示されています。


問 
労働組合の申し合わせにより時間外割増賃金の返上を申し出た場合にかかる申し合わせは法第37条に違反するから、民法第90条(公序良俗に反する事項を目的とする法律行為)の規定により無効となり、使用者は割増賃金を支払う事を要すると考えるが如何。


答 
法第37条は強行規定であり、たとえ労使合意の上で割増賃金を支払わない申し合わせをしても、法第37条に抵触するから無効である。(昭24・1・10基収68)

 このように、厳しい経営状況を従業員が理解し合意の上での申し出ではあっても、「時間外労働」となった場合は、その「超過時間」に対して時間外割増賃金を支払わなければならないとされています。

 しかし、受注が激減している状況で、実際の仕事量も大幅に減っていると思われますので、本当に支払うべき「時間外労働」についてこの機会に徹底的に見直し、「時間内労働」に転換できないかどうか再検討する必要があるのではないでしょうか。

 従業員の勤務体制なども見直し、待機人員を必要最小限度とすることや、時差出勤、フレックスタイム制の活用、休憩時間の変更や交代制勤務など、時間外労働を生産性に見合う最低限度の時間まで絞り込むための努力、工夫が必要となります。

 そして、それでも緊急的に受注が発生し、やむを得ず時間外労働などか発生した場合には、法の定める割増賃金を支払うことも含めて、この機会に検討する余地はあるでしょう。

解雇予告除外認定について

      -ここが知りたい労使問題

◆【質 問】

当社就業規則の懲戒解雇事由は20項目以上詳細に定めていますが、解雇については、「従業員の責めに帰すべき事由によって解雇する場合で、労働基準監督署長の認定を受けた者を除き、30日前に本人に予告し、または労働基準法に規定する平均賃金の30日分に相当する予告手当を支給して行う」となっています。
 この「労働基準監督署長の認定」を受ける場合の基準とはどのような内容でしょうか?

◆【回 答】

就業規則の解雇事由として定めている場合であっても、労働者の責めに帰すべき事由については、総合的に判断して認定するべきとされています。

◆【解 説】

 労働基準法第20条では解雇予告の義務について規定されていますが、その但し書きでは、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。」とされ、解雇予告は不要であると定めています。また、これらの場合には、事前に所轄労働基準監督署長の認定を受けなければならないとされています。
 これについて通達では、労働基準監督署長は以下の基準により認定すべきこととされています。(昭23・11・11基発1637 昭31・3・1基発111一部要約)

 「労働者の責めに帰すべき事由とは、労働者の故意、過失又はこれと同視すべき事由であるが、判定にあたっては、労働者の地位、職責、勤続年限、勤務状況等を考慮の上、総合的に判断すべきであり、労働者の責めに帰すべき事由が法第20条の保護を与える必要のない程度に重大又は悪質なものであり、従ってまた使用者をしてかかる労働者に30日前に解雇の予告をなさしめることが当該事由と比較して均衡を失するようなものに限って認定すべきものである。」

 更に「労働者の責めに帰すべき事由」の具体的な事例として
①原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する場合
②賭博、風紀紊乱(ぶんらん)等により職場規律を乱し、悪影響を及ぼした場合
③経歴を詐称して採用された場合
④他の事業場へ転職した場合
⑤原則として2週間以上無断欠勤した場合
⑥出勤不良で数回にわたって注意を受けても改めない場合
をあげていますが、その認定にあたっては、「必ずしも個々の例示に拘泥することなく、総合的がつ実質的に判断すること。なお、就業規則に規定されている懲戒事由についてもこれに拘束されないこと。」とされています。

 このように、就業規則の懲戒解雇事由に該当するからといって直ちに認定されるというものではないので、会社側としても除外認定申請をする際には、こうした基準を参考にするなど、慎重な対応が必要となるでしょう。また、認定審査では事実確認が重要となりますので、客観的に解雇事由を証明できる書類などはできるだけ多く準備しておくべきでしょう。

紛争の自主的解決とは?

    -ここが知りたい労使問題

◆【質問】◆

当社は、従業員約30名の食品卸会社で、創業以来35年間、労使関係も比較的良好でしたが、最近の厳しい経営環境から、今後は賃金をはじめ労働条件をめぐるトラブルなども懸念されています。
 もしもトラブルが発生した場合は、できるだけ社内において解決するよう考えていますが、そのためには企業側の対応としてどのようなことが求められているのでしようか?

◆【回答】◆

紛争当事者である労使においては、まず早期に誠意をもって話し合うことにより、お互いの主張を確認し、問題点を整理すること。労使で直接話し合うことが困難な場合は、第三者を介して話し合いを行うことなどが求められます。

◆【解説】◆
 企業内で労使トラブルが発生した場合の「紛争の自主的な解決」について、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」平13.7.11法律112号)第二条では次のように定められています。

「個別労働関係紛争が生じたときは、当該紛争の当事者は、早期に、かつ、誠意をもって、自主的な解決を図るように努めなければならない。」 いわゆる「努力義務規定」ですが、具体的な内容については、関連通達で次のとおり示されています。

 努力義務の具体的内容

(1)本条(法二条)により、紛争当事者である労使においては、具体的には、まず、早期に、誠意をもって話し合うことにより、互いの主張を確認し、問題点を整理すること、又は、紛争当事者が直接に話し合うことが困難な場合には、第三者を介して話し合いを行うなどにより、企業内での解決に努めることが求められることとなること。

(2)このような話し合いを促進するためには、労働者から苦情が申し立てられた際に対応するのみならず、あらかじめ、企業内において、労働者からの苦情を受け付けてこれを処理するための仕組みを整備しておくことが望ましいこと。具体的には、苦情処理の仕組みを明確化して労働者に周知する、不満・苦情を受け付ける担当者・窓□を設ける、紛争処理機関を設置するといった様々な方法が考えられるが、如何なる方法をとるかは、各企業の労使に委ねられるものであること。(平13・9・19厚労省発地129 第3「2」)

 このように、自主的解決のためには、その場だけの一過性の対応ではなく、企業内において労働者からの苦情を受けて、これを処理するしくみを整備しておくことが望ましいとされています。
 例えば、社内に苦情処理機関としての「相談室」を設置することなどが考えられますが、どのような方法とするかは各企業の実態に即した対応策を講じることとされています。

 現在まで比較的良好な労使関係で推移してきたとしても、今後トラブルの発生が懸念されるようであれば、こうした時期こそ、紛争を未然に防止するため就業規則や諸規程を見直す絶好のチャンスでもあります。企業の実情に応じて、それらを見直すとともに、従業員との意見交換の場や職場のコミュニケーションなど、労務管理全体の整備に取り組むのもよいでしょう。

11月★定額の賞与は『賞与』ではない?  -ここが知りたい労使問題

【質 問】

当社の賃金規程の賞与に関する定めでは、「毎年6月に基本給の1.5ヵ月分、12月に2.5ヵ月分の賞与を支給する」となっており、実際にもその定めに従って支給しております。
 このように賃金規程において賞与の支給額まで定めている場合、賞与とはみなされないという指摘を受けましたが、このような規定では問題があるのでしようか?

【回 答】

現状の規定では、賞与の支給額を確定して支払うことをあらかじめ定めていることになりますので、労働基準法の上では、賞与には該当せず、通常の賃金として毎月支払いの対象となります。

【解 説】
 労働基準法第24条第2項では、「賃金は、毎月1回以上、1定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金については、この限りでない。」と定められています。
 また、ここでの「賞与」については、通達で以下の通り示されています。
 「賞与とは定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものをいうこと。定期的に支給されかつその支給額が確定しているものは、名称の如何にかかわらず、これを賞与とみなさないこと。
 したがって、かかるもので施行規則第8条に該当しないものは、法第24条第2項の規定により毎月支払わなければならないこと。」(昭22・9・13発基17)

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【 参 考 】
 労働基準法施行規則
第8条 法第24条第2項
 ただし書の規定による臨時に支払われる賃金、賞与に準ずるものは次に掲げるものとする。
1. 1箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当
2. 1箇月を超える1定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
3. 1箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当

 このような根拠から、質問のケースのように「毎年6月に基本給の1.5ヵ月分、12月に2.5ヵ月分の賞与を支給する」と、賃金規程に確定した支給額まで定められている場合は「賞与」とみなされず、労働基準法施行規則第8条の「精勤手当」、「勤続手当」、「奨励加給又は能率手当」のいずれにも該当しないため、同法第24条第2項の定めにより、毎月払いの対象ということになります。
 したがって、あくまでも「賞与」として支給するのであれば、賃金規程の上で支給額が確定しないような定めにしておくことが必要です。
 たとえば、会社の業績などに応じて賞与の支給時期や額の変動が予想されるようであれば、「賞与は、各期の業績を勘案し、原則として年2回、6月と12月に支給する。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合には、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。」としておけば問題ないでしょう。

再雇用後の平均賃金とは? -ここが知りたい労使問題

【質 問】

当社は電子部品製造業ですが、長期化する不況のため本年5月より一部で休業を実施し、中小企業緊急雇用安定助成金を活用しています。このたび、8月末で定年退職となる者を嘱託として再雇用する予定ですが、再雇用後は定年時の給与額の6割相当で再雇用契約を締結することになっています。
 そこで、9月以降も休業が続く場合、休業手当を算出する際の平均賃金は、定年時の給与額を基準とするのでしょうか、それとも再雇用後の給与額を基準とするのでしょうか?

【回 答】

定年退職後も引き続いて嘱託として再雇用する場合には、実質的に一つの継続した労働関係であると考えられますので、算定事由発生日以前3ヵ月間(定年退職前の3ヵ月間)を算定期間として平均賃金を算出して、その6割以上の休業手当を支給することになります。

【解 説】
 

労働基準法第12条第1項では、「平均賃金とは、これを算定すべき事由が発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した額をいう。(ただし書き略)」と定めています。
 このケースのように、定年退職者を引き続き嘱託として再雇用する場合の平均賃金の算定については、通達で次のとおり示されています。

問=「当局管内で下記のごとき事案が発生し、この場合の平均賃金の算定について、下記のような二つの方法が考えられるが、当局としては②によることが妥当と考えるが如何。

 


株式会社○○の労働者Aは昭和44年4月27日定年退職し、4月28日より継続して再雇用され従前の業務に従事していたが5月15日業務上負傷し、平均賃金算定事由が発生した。

① 形式的には定年退職前の契約と後の契約とは全然別個の契約であること等からみて、定年退職後の再雇用日を雇入れの日とみて平均賃金を算定する。

② 当該労働者の勤務の実態に即し、実質的に判断することとし、形式的には定年の前後によって別個の契約が存在しているが、本事案のように定年退職後も引き続いて嘱託として同一業務に再雇用される場合には、実質的には一つの継続した労働関係であると考えられるので、労働基準法第12条第1項から第5項までの規定により算定事由発生日以前3箇月間を算定期間として平均賃金を算定する。

答=「設問の場合の平均賃金は②によって算定されたい。」(昭45・1・22基収4464)
 このように、再雇用直後1ヵ月間の休業手当は、再雇用後の新賃金を基準にするのではなく、定年前の3ヵ月間に支払われた賃金をもとに算出された平均賃金が基準となります。  なお、再雇用後1ヵ月を過ぎても休業状態が継続するようであれば、各月に支払う休業手当は直前の対象月を含めて再計算しますので、3ヵ月以上経過すれば再雇用後の賃金のみで平均賃金を算出することになります。

法定内残業手当は、割増賃金の基礎になるか? (そこが知りたい労使問題)

 ◆質 問◆ 
 当社は所定労働時間が午前9時始業、午後5時終業(休憩1時間)の7時間ですが、工場内の整理整頓などで残務的な仕事もあります。
 従業員との話し合いで午後6時までの1時間については、残業の有無にかかわらず所定労働時間(7時間)で換算した賃金を基準として定額を「勤務手当」の名称で一律支給し、1日8時間を超える場合には、その時間については25%割増の賃金を支給しています。
 この場合、午後5時から6時までの1時間に対する「勤務手当」を割増賃金の基礎として含めることになるのでしようか?

 ◆回 答◆
 残業の有無にかかわらず所定労働時間外の1時間(法定内残業)について所定労働時間の賃金を基準として定額で支給している「勤務手当」は「通常の労働時間の賃金」とは認められませんので、割増賃金の基礎には算入されません。


 ◆解 説◆
 労働基準法第37条において、「使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」とされています。
 質問は、いわゆる「法定内残業(実働8時間になるまでの残業で、法定の時間外労働に該当しない残業)」として定額で支給している「勤務手当」について割増賃金の基礎に含めるかどうかとのことですが、通達では次のとおり示されています。

  《法定内残業に対して支払われる手当》(要点抜粋)

1.所定労働時間が1日7時間である事業場において、所定労働時間を超え、法定労働時間に至るまでの所定労働時間外労働に対する賃金として、本給のほかに一定月額の手当を定め個々の労働者が所定労働時間外労働をすると否とにかかわらずこれを支給することは、その手当の金額が不当に低額でない限り差し支えない。

2.前記1の手当は、法第37条にいう通常の労働時間の賃金とは認められないから、同条の規定による割増賃金の基礎に算入しなくても差し支えない。
      (昭29・7・8基発3264  昭63・3・14基発150)

 今回のケースでは、午後5時の終業後午後6時までの1時間については、法定内残業であって、従業員との話し合いのうえ、残業の有無にかかわらず所定労働時間の賃金を基準として一律に支給している勤務手当は、実態は所定労働時間外の手当であり「通常の労働時間の賃金」とは認められませんので、通達どおり、割増賃金算定の基礎に算入しなくても差し支えないということになります。
 なお、従業員との話し合いのうえ決定されていたとしても、今後のトラブル防止のためには、就業規則への記載と社内へ周知されているかどうか再度確認する必要はあるでしょう。

解雇予告と同時に休業させた場合は?

労使問題

Q 当社の従業員Aは無断欠勤や遅刻を繰り返したことから再三にわたり注意、指導をしました。しかし、反省の態度がみられず他の従業員への影響もあるので、改善されなければ予告期間を設けて解雇したいと考えております。ところが、受注が大幅に減少しているため、全従業員対象に休業を実施し、その問六割の賃金を支給する予定です。この場合、Aに対する休業手当も6割であることから、休業手当の総額が平均賃金30日分以上の額となる日まで予告期間を延長するべきでしようか?
A 30日以上前に予告がなされている限り、全社一斉の休業実施により6割の賃金が支給されている期間にAの休業が含まれていても、予告期間の延長は必要ありません。

★★ 解 説 ★★
 労働基準法第20条では、使用者が労働者を解雇しようとするときは、少なくとも30日前にその予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないとしています。また、予告期間が30日に満たない場合は、短縮された日数分の平均賃金を支払えばよいとされています。
 これは、解雇される労働者が、30日以上の予告期間を設ければその間働いて賃金を得ることができ、予告期間が30日に満たなければ、最低でも平均賃金の30日分に相当する額になるまでの手当を受けることができるのを保証したものといえます。
 しかし、このケースでは、Aに解雇予告してから全社一斉の休業を実施した場合に、休業手当が平均賃金の6割であることから、予告期間中の賃金の総額が平均賃金の30日分に満たないことが確実なので、解雇予告期間を延長するべきかということですが、この場合について通達では次のとおり示されています。

◆予告と同時に休業した場合の解雇として

問「○○会社において解雇の予告と同時に労働者に休業を命じ、予告期間中法第26条に規定する休業手当を支給し、予告期間満了とともに解雇しようとした事件であるが、本件に関し次の諸点(略)について疑義があるが如何。」

答「本件については、30日前に予告がなされている限り、その労働契約は予告期間の満了によって終了するものである。」(昭24・12‐27基収1224)

 以上のように、Aに対して30日以上前に解雇の予告後、全社一斉の休業実施により、休業手当を6割支給で休業させた場合でも、解雇予告期間を延長することなく、Aの労働契約は予告期間満了により終了することになります。
 ただし、解雇の場合は経営環境が大変厳しい中ではあっても特に慎重な対応が必要なことから、再度Aの欠勤や遅刻の本当の原因は何かを探るとともに、現状までは注意、指導は一応実施されているようですが、本人との面談などによる事情聴取や弁明の機会を与えるなど一定の配慮をし、本当に解雇以外に方法はないかどうかを判断したうえで最終的に決定することが望ましいでしょう。

採用内定者の自宅待機中の金銀は?

ここが知りたい労使問題
★Q★ 質 問
 当社は、急激な受注減少のため設備投資を大幅に見直し、増設した新工場の稼働開始を、当初予定の今年3月から7月に変更しました。 ところで、今年4月入社予定の新規学卒者については、将来の人材として是非確保したいのですが、こういった事情なので7月から出社として3ヵ月間は自宅待機とする場合、賃金はどうすればよいのでしようか?

★A★ 回 答
 新規学卒者の入社予定を4月として内定通知を発し、誓約書が提出されている場合、4月から6月までの3ヵ月分については休業手当相当の賃金を支払うことになります。

★解 説★
 新規学卒の採用内定者に、会社が採用内定通知を出し、学生が入社誓約書を提出した場合、例外的な場合を除いて入社日(4月1日)を始期とする労働契約が成立することになります。
 しかし、今回の場合、受注減などの事情により会社の都合で入社日を当初予定の4月1日から7月1日に繰り下げるとのことですが、このような場合については、通達で次のように扱うものとされています。

「新規学卒者のいわゆる採用内定については、遅くも、企業が採用内定通知を発し、学生から入社誓約書又はこれに類するものを受領した時点において、過去の慣行上、定期採用の新規学卒者の入社時期が一定の時期に固定していない場合等の例外的な場合を除いて、一般には、当該企業の例年の入社時期を就労の始期とし、一定の事由による解約権を留保した労働契約が成立したとみられる場合が多いこと。したがって、そのような場合において、企業の都合によって就労の始期を繰り下げる、いわゆる自宅待機の措置をとるときは、その繰り下げられた期間について、労働基準法に定める休業手当を支給すべきものと解される。」(昭63・3・14基発150)

 つまり、自宅待機は「使用者の責に帰すべき事由による休業」とされ、労働基準法第26条により、平均賃金の6割以上の「休業手当」を支払うことになります。
 ただし、平均賃金は原則として、「事由発生日以前3ヵ月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額」をもとに計算されますが、まだ賃金が支払われたことがない採用内定者の場合は、採用条件で示された賃金をもとに計算することになります。
 しかし、新規学卒者を自宅待機させる場合には、法律上は休業手当を支払えば足りることになりますが、3ヵ月自宅待機させた場合のメリット・デメリットも十分考慮検討する必要があるでしょう。
 例えば、会社としての金銭・的なメリットの反面、学生自身にとっては会社に対する将来的な不安やイメージダウンにより、待機中に採用辞退または入社後の意欲減退などのデメリットが懸念され、優秀な人材の確保・育成のためには、少なからず障害となります。
 厳しい状況下でも内定取消しを回避し、将来有望な人材を確保したいという経営判断ですが、自宅待機にとらわれず、むしろこの機会に会社業務の実習や理解、社外各種研修などを通じて企業の実態や厳しさを体得する絶好のチャンスととらえ、出来る限り早期に出社させ、より充実した教育研修期間として活用されてはいかがでしょうか。

割増賃金の基礎から除外される住宅手当とは

ここが知りたい労使問題 Q&A

割増賃金の基礎から除外される住宅手当とは

 Q 質問
当社は、賃金規程を改正し住宅手当を新たに支給しようと考えています。住宅手当の一律支給は、割増賃金の基礎に含めなければならない、と聞いていましたので、扶養家族がある者には2万円、扶養家族がない者には1万円という区分を予定しています。
 この場合、一律支給とはせず、扶養家族の有無によって差を設けていますので、割増賃金の基礎に含めなくてもよいのでしょうか?

 A 回答
住宅に要する費用以外の要素に応じて定額で支給される場合は、割増賃金の基礎に含めなければなりません。

 解 説
 労働基準法施行規則(第21条)により、住宅手当は残業代などの割増賃金の基礎から除外されていますが、対象となる住宅手当の要件は厳しく定められています。
 「割増賃金の基礎から除外される住宅手当とは、『住宅に要する費用に応じて算定される』手当をいうものであり、手当の名称の如何を問わず実質によって取り扱うこと。」(平11・3・31基発170「1」(2))とされていますが、さらに具体例として次のように示されています。

住宅手当の具体例
◆割増賃金の基礎から除外される住宅手当の例
(イ)住宅に要する費用に定率を乗じた額を支給することとされているもの。
  例えば、賃貸住宅居住者には家賃の一定割合、持ち家居往者にはローン月額の一定割合を支給することとされているもの。
(ロ)住宅に要する費用を段階的に区分し、費用が増えるに従って額を多く支給することとされているもの。
  例えば、家賃月額5~10万円の者には2万円、家賃月額10万円を超える者には3万円を支給することとされているようなもの。
◆割増賃金の基礎に含めなければならない住宅手当の例
(イ)住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされているもの。
  例えば、賃貸住宅居住者には2万円、持ち家居往者には1万円を支給することとされているようなもの。
(ロ)住宅以外の要素に応じて定率又は定額で支給することとされているもの。
   例えば、扶養家族がある者には2万円、扶養家族がない者には1万円を支給することとされているようなもの。
(ハ)全員一律に定額で支給することとされているもの。

 今回の質問のように、扶養家族の有無で住宅手当の支給額に差を設けているような場合、そのような決め方は、「住宅に要する費用に応じて算定される」ものではありませんので、割増賃金の基礎に含める必要があります。
 住宅手当として割増賃金の基礎から除外するためには、「住宅に要する費用に応じて算定される」ことが必要です。この場合、費用の何パーセントというように、住宅手当の額を細かく決めなくても、費用が住宅手当を決める基準となっていればよいことになります。

遡及賃金の支払対象は?

遡及賃金の支払い対象は?
     ここが知りたい労使問題

★質 問★
当社は、賃金体系の改定を今年4月1日に行う予定でしたが、業績や原材料価格の見通しなど種々の課題を検討した結果、昇給を伴う新賃金規程の最終決定は10月1日にずれ込みました。
 この決定に伴って、昇給差額を4月に遡及して10月20日の給料支給日に支払うことを予定していますが、この場合、4月から9月末までの退職者には遡及して支給しないとすると違法になるのでしょうか?

★答 え★
 新賃金決定後、その支払対象を在職者のみとするか、退職者を含めるかは当事者の自由とされていますので違法にはなりません。
 
★解 説★
労働基準法第24条(賃金の支払い)には、「賃金の全額払い」の原則が定められています。
 お尋ねのケースは、10月1日に新しい賃金体系を決定して、それに基づいて昇給した差額を4月に遡って10月20日に支払うと決足した場合、4月から9月までの退職者について差額を支払わないと、全額払いの原則に反するかということてすが、この点について同法の解釈例規として次のように示されています。


【遡及賃金の支給対象】
 問=「9月3日に本年1月からの新給与を決定し、遡及支払を行う場合、1月以降9月3日までの退識者については支給しないと規定するのは違法か。」

 答=「新給与決定後過去に遡及して賃金を支払うことを取り決める場合に、その支給対象を在識者のみとするかもしくは退職者をも含めるかは当事者の自由であるから、設問のごとき規定は違法ではない。」(昭23‐12・4基収4092抜粋)

 一般的に、昇給の差額を遡及して支払う場合に、その性格上、遡及差額分は賃金の後払いであると考えられるので、退職者についても在職期間中に支払うべき賃金があれば、それを受ける権利があるのではないかという懸念が生じます。
 しかし、今回のケースでは、昇給が賃金体系の見直しも含めた賃金規程の改定に伴うもので、その確定日は当初予定していた4月1日ではなく10月1日となっています。
 また、全額払いの原則は、あくまでも各賃金支払日に支払うべきことが確定している賃金についてのみ当てはまるものと考えられています。
 したがって、当初予定していた4月の改定に沿うように遡及して昇給の差額を支給すると決定した場合、4月から9月までの退職者にも支給すべきかどうかは、この解釈例規が示すとおり、「当事者(=使用者)の自由である」とされているので、在職者に対しては4月分まで遡及して差額を10月20日に支給、退職者に対しては差額は支給しない、と決定した場合でも違法ではないことになります。

制裁で減給、平均賃金の起算日は?

Q 
 当社は、このほど就業規則の定めによって、減給の制裁を行うことになりました。
 この制裁事由の発生日(行為日)は5月20日、社内で懲罰委員会の結果、減給の制裁を決定したのが5月30日、対象従業員に通知したのが6月5日となっています。
 当社の賃金締切日は毎月末日ですが、この場合、5月20日に制裁事由が発生していますので、直前の賃金締切日となる4月末日を平均賃金算定の起算日としてよいのでしようか?


 減給の制裁の相手方である従業員に意思表示が到達した日が6月5日であれば、その直前の賃金締切日となる5月末日が平均賃金算定の起算日となります。

解説
 平均賃金は、解雇予告不当、休業不当、年次有給休暇中の賃金、災害補償、減給の制裁の制限額の算定基礎として用いられます。
 労働基準法第91条では、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が「平均賃金」の1日分の半額を超えることはできないとされています。
 そして、同法第12条では、「①平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。(中略) ②前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。」と定めています。
 この「算定すべき事由の発生した日」とは、平均賃金を算定する際の起算日ですが、具体的には

① 解雇予告手当=労働者に解雇の通告をした日
② 休業手当=休業させた日 (休業させた日が二日以上にわたる場合は、その最初の日
③ 年次有給休暇=年次有給休暇を与えた日(年次有給休暇が二日以上にわたる場合は、その最初の日
④ 災害補償=事故が発生した日または診断によって疾病の発生が確定した日
⑤ 減給の制裁=減給の制裁の意思表示が相手方に到達した日(昭30・7・19 29基収5875)とされています。

 今回のケースでは、減給の制裁事由の発生日が5月20日であり、平均賃金算定の記算日は、直前の賃金締切日である4月末になるのではないかとのことですが、労働基準法の解釈として示されているとおり、減給の制裁の場合には、実際にその事由の発生した日(行為日)ではなく、減給の制裁の意思表示が相手方、つまり対象となる労働者に到達した日を算定すべき事由の発生した日とします。
 したがって、6月5日に通知したのであれば、5月末日が算定の起算日となります。

パートから正社員に登用、年休は?

Q】当社では、週3日勤務で勤続4年目のパートタイマーを正社員として登用することになりました。 この従業員に対する年次有給休暇の扱いはどのようになるのでしょうか?
【A】パートタイマーから正社員へ登用する場合であっても、パートタイマーとして勤務した年数を通算し、年次有給休暇の付与基準日に正社員であれば、正社員としての所定労働日数に応じた年次有給休暇を付与することになります。

************ 解 説 ***********
<年次有給休暇の付与日数>
労働基準法第39条では、「使用者は、その雇入れの日から起算して6ヵ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、または分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。」と定めています。 さらに、その後はこの6ヵ月経過日から1年を経過するごとに、その日を基準日として所定の日数の年次有給休暇を与えなければならないとされています。 また、パートタイマーのように、1週間の所定労働日数が通常の労働者に比べて少ない人については、所定労働日数などの比率を考慮して厚生労働省令で定められた基準による日数を与えなければなりません。これを一般的には、年次有給休暇の「比例付与」といいます。

<所定労働日数が変更された場合>
お尋ねのケースのように、パートタイマーから正社員に登用された場合、年次有給休暇の付与日数の扱いについては、労働基準法第39条の解釈として次のように示されています。
問=「法第39条の適用を受ける労働者が、年度の途中で所定労働日数が変更された場合(パートから正社員への登用など)、休暇は 基準日において発生するので、初めの日数のままと考えるのか、それとも日数の増減に応じ、変更すべきと考えるのか」
答=「見解前段のとおり。」(昭63.3.14基発150)
つまり、年次有給休暇の付与日数は、基準日時点の所定労働日数により決定されるので、付与した後に所定労働日数が増減しても、その年度の年次有給休暇の付与日数は変更されません。この増減による年次有給休暇の付与日数の変更は、次の基準日からということになります。また、パートタイマーから正社員への登用や、正社員を定年退職後に嘱託として再雇用するというような雇用形態の変更に伴って新たな雇用契約を締結する場合でも、勤務自体は継続していますので、基準日における継続勤務期間は、雇入れ日から起算して通算しなければならないとされています。

 以上をまとめると、所定労働日数が変更となった場合は次のように扱います。
(1)雇用形態にかかわらず、継続勤務期間については雇入れの日から基準日までの期間を通算(パートタイマー⇒正社員⇒嘱託などすべて通算)する。
(2)基準日時点での労働契約上の所定労働日数に応じて付与日数を決定する。

ここが知りたい労使問題 半日勤務の日の休業手当はどうなるのか?

Q.土曜日が半日勤務の会社で、土曜日に会社の都合による休業をした場合の休業手当はどうなるのでしょうか?

 当社は、1日の所定労働時間が月曜日から金曜日まで7時間、土曜日は4時間で、1週39時間の勤務体制となっています。
 今回、取引先の都合でどうしても土曜日に休業せざるを得ない状況となりました。この場合、従業員に対する休業手当の考え方ですが、月曜日から金曜日までの労働時間に対する賃金の6割を支払うのはどうも納得できません。
 土曜日の場合は、労働時間を1日4時間として換算した賃金額の6割でよいのではないでしょうか?

A.土曜日の休業であっても、月曜日から金曜日のいずれかの日に休業させた場合と同じ額の休業手当を支払うことが必要です。

 労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定められています。
 お尋ねのケースでは、土曜日の休業手当は4時間に比例した賃金を基礎としてもよいのではないかとのことですが、この解釈として通達では、
(1)「労働基準法第26条は、使用者の責に帰すべき休業期間中、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければならないと規定しており、従って一週中のある日の所定労働時間がたまたま短く定められていても、その日の休業手当は平均賃金の100分の60に相当する額を支払わなければならない。」としています。
 さらに
(2)「一日の所定労働時間の一部のみ使用者の責に帰すべき事由による休業がなされた場合にも、その日について平均賃金の100分の60に相当する金額を支払わなければならないから、現実に就労した時間に対して支払われる賃金が平均賃金の100分の60に相当する金額に満たない場合には、その差額を支払わなければならない。」(昭27・8・7基収3445)としています。

 土曜日の場合、所定労働時間を考慮すると休業手当が過払いになるのではないか、というお考えも理解できます。
 しかし、通達でも示されているように、あくまでも休業手当は「平均賃金の100分の60に相当する額を支払わなければならない」ことになります。
 つまり、土曜日であっても他の曜日であっても、支払うべき休業手当は同じになるということです。
 今回の場合、仮に土曜日の4時間労働を基準として休業手当を支給した場合、その額が平均賃金の100分の60相当額に満たなければ、その差額を支払うことが必要です。

ここが知りたい労使問題 「就業規則の開示要請」

Q.既に退職している者が、労働基準監督署に対して、届け出されている就業規則の開示要請をすることができるのでしょうか?

 当社が営業経験者として中途採用した勤続5年目の係長のことですが、成績は同クラス従業員の半分程度であり、顧客とのトラブルも多かったので、話し合いによって本人合意の上で昨年7月末に依願退職となりました。
 ところが、当社従業員の話によると、最近になって本人は、退職金規定など就業規則の内容は全くしらず退職金も思ったより少なかったので、労働基準監督署に対して、届け出ている当社の就業規則を開示するように要請し、内容を確認してから規定の退職金を請求すると言っているようです。
 既に退職している者でも、労働基準監督署に対して、届け出ている就業規則の開示を要請できるのでしょうか?

A.一定の場合は労働基準監督署に対して就業規則の開示を要請することができ、開示を行う対象者には、事業場を退職した者であって、その事業場との間で権利義務関係に争い等を有している者も含まれます。

 労働基準法第106条(法令等の周知義務)では、使用者は、労働基準法及び同法に基づく命令の要旨、就業規則、法に基づく労使協定などを労働者に周知する義務が課されています。
 具体的な周知方法としては、(1)常時各作業場の見やすい場所に提示し、または備え付ける方法、(2)書面を交付する方法、(3)磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、労働者がその記録の内容を常時確認できる機器を設置する方法、のいずれかの方法によるものとされています。
 このように周知方法まで明確にされているにもかかわらず、この趣旨が徹底されないため、「就業規則の存在すら知らない」ことを発端とする労使間のトラブルが多いのも事実です。
 使用者が周知していない場合、本来は使用者に対してこの義務の履行を求めるものですが、通達では、『使用者がこの周知義務を履行せず、問題が生じていると認められる場合には、原則として、就業規則が適用される立場にある者か否かを基準に、労働基準監督署に届け出られている就業規則を開示することとして差し支えない』(平13.4.10基発354「1」(1))とされています。
 また、「開示要請ができる者」として当該届出事業場に所属する労働者(労働基準法第9条に該当する者)及び使用者(同法第10条に該当する者)のほか、当該事業場を退職した者であって、当該事業場との間で権利義務関係に争い等を有している者であること。』(平13.4.10基発354「2」)と示しています。
 このことから、その事業場を退職した人でも、解雇や退職金をめぐるトラブルが生じている場合などは、労働基準監督署に対して、届け出された就業規則などの開示を要請できることになります。

ここが知りたい労使問題 「退職時等の証明書交付」

Q.過去に勤務していた従業員から退職時の証明書を請求された場合、退職後の期間に関係なく交付しなければならないのでしょうか?

 当社を退職して2年余を経過している従業員から、このほど退職時の証明書の交付を請求されています。
 従来、当社を退職した従業員から請求があった場合は、ほとんど退職後遅くとも1〜2ヶ月ぐらいで交付していました。
 今回は初めてのケースでもありますが、今後とも過去に退職した従業員から請求された場合、退職後の期間に関係なく交付しなければならないのでしょうか?

A.退職時の証明書について退職後2年を過ぎてから請求された場合は、請求に応じる必要はない。

 労働基準法第22条(退職時等の証明)第1項では「労働者が退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」としていますが、請求に応じなければならない期間については定められていません。
 そこで、退職時の証明について、労働者はいつまで請求できるかが問題となります。
 民法第166条(消滅時効の進行等)では、「消滅時効は、権利を行使することができるときから進行する」とあります。
 また、労働基準法第115条(時効)では、「この法律の規定による賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する」と定めています。
 これらにより、退職した時から2年を過ぎれば、労働者は退職時の証明を使用者に請求することはできず、使用者も2年を過ぎれば、労働者の請求に応じる必要はないことになります。
 通達でも「問=退職時の証明については、法第115条により、請求権の時効は2年と解するが如何。答=貴見のとおり。」と請求権の時効について行政解釈が示されています。)(平11.3.31基発169)

 なお、平成15年の労働基準法改正では、解雇をめぐる紛争の未然防止(なぜ解雇されたのかの理解)と、その迅速な解決を図る目的から、第22条に第2項として次の規定が加えられました。
 「解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、労働者が当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。(以下略)」
 これにより、解雇者については、退職時の証明書の請求・交付に加え、解雇予告期間中にも解雇理由について証明書の請求に応じる必要があります。

ここが知りたい労使問題 残業時間と遅刻の相殺

Q残業時間と遅刻時間を相殺した場合でも、残業に対する割増賃金は支払うべきでしょうか?

 当社では、従業員が遅刻した場合、その日に残業していれば残業時間から遅刻時間分を差引し、実労働時間を基準に残業の割増賃金を計算しています。
 しかし、一部の従業員が、遅刻の時間と終業時刻後に残業する労働時間とは意味が異なるので、遅刻相当分を差し引く代わりに残業時間相当分は割増賃金を支払うべきだと主張しています。
 このような場合、就業時刻後の残業時間について割増賃金を支払うべきでしょうか?

A残業時間と遅刻時間を相殺した結果、その日の「実労働時間」が8時間を超えない限り、労働基準法上の割増賃金の支払義務はない。

 労働基準法第37条は、使用者が労働者に法定の労働時間(原則として1日8時間)を超えて労働させた場合には、「通常の労働時間又は労働日の賃金計算額の2割5分以上5割以下の範囲内で、政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」と定め、その率は時間外労働においては2割5分以上、休日労働においては3割5分以上としています。
 労働基準法上の労働時間とは、実際に労働した時間をいいます。
 始業9時、就業18時、休憩1時間の会社は、通常勤務の場合の実労働時間は8時間となりますが、例えば、1時間遅刻した従業員がその日に1時間残業しても、実労働時間は8時間ですので、割増賃金を支払う必要はないことになります。
 行政通達でも「時間外労働について法第36条第1項に基づく協定(時間外労働に関する協定)及び法第37条に基づく割増賃金の支払を要するのは、実働時間を超えて労働させる場合に限るものである。
 従って、例えば労働者が遅刻した場合その時間だけ繰り下げて労働させる場合には、1日の労働時間を通算すれば法第32条、または第40条の労働時間を超えないときは、同協定及び法の割増賃金の支払は必要ない(抜粋)」(昭29.12.1基収6143、昭63.3.14基発150ほか)とされています。
 このような取扱いをするためには、就業規則に「割増賃金は、実労働時間が8時間を超えた時間について支払う」などの規定を設けておくことが必要でしょう。
 ところで、1日8時間労働としている事業場で、遅刻した時間を超えて残業させる場合には、法定の労働時間を超えることになりますので、協定の締結・届出とともに超過した時間に対する割増賃金が必要となります。
 また、当然のことながら、その日の勤務での相殺はできますが、遅刻をした日ではない別の日の残業時間と相殺することはできません。

定年退職後の賞与不支給 ~ここが知りたい労使問題 ~

Q 「退職日」を自ら選択できない「定年退職」の場合でも賞与は支給しなくてよいのでしょうか?

 当社の就業規則では、夏季賞与の場合、支給日は7月の第3金曜日、支給対象期間は前年の12月1日から当年5月31日までとし、支給日現在に在職している従業員に支給すると定められています。

 今回対象の定年退職者は、支給対象期間の全期間勤務していますが、支給日前の6月28日の誕生日に定年退職となりました。

 このように「退職日」を自ら選択できない「定年退職」の場合でも賞与を支給しなくてよいのでしょうか?

A 支給日に在籍していなければ、退職日を自ら選択できない「定年退職者」についても賞与を支給しなくてよい。

 賞与とは、労働基準法上も「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給が予め確定されていないもの」(通達:昭22.9.13 発基17)とされているように、賞与は月例賃金と異なり、必ず支給しなければならにものではなく、支給額、支給日、支給方法、支給対象者などを自由に定めることができます。

 賞与の査定期間中勤務していても「支給日に在籍しない者には支給しない」ことが就業規則等に明記されている場合、「支給日在籍」が賞与の支給条件ですから、その条件を満たさない者に支給しなくても合理性を有し法違反とはならないとされています。(最高裁判決:昭57.10.7ほか)

 また、定年退職者のように、その従業員が支給日に在籍しない原因が退職時期を自ら選択できない場合でも、「支給日在籍要件」は従業員の退職事由とは直接関係なく、支給日において雇用関係にある者を支給対象とする趣旨であるといえますから、労働者の退職事由にかかわらず、支給日に雇用関係がない以上、賞与を支給しなくてもよいといえます。(東京地裁判決:平成8.10.29、平成14.9.9)

 このケースでは、定年退職した労働者は会社の賞与支給日においてすでに雇用関係も終了していることから、賞与支給日に在籍いていません。

 したがって、就業規則に基づいて賞与を支給しなくても差しつかえありません。

 なお、支給日に在籍しない者に賞与を支給しないことが有効であるとするのが多数の判例の立場ですが、退職事由を問わないのは賞与の賃金としての正確から疑問が多い、とする意見もあります。

 自らの意思で退職時期を選択できない定年退職者や死亡退職者については一定の配慮をしているケースもありますので、会社の業績や永年勤続の功績、勤務状況など、総合判断により一定の配慮をされることはのぞましいことでしょう。

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